先日私は、医学科で「垂直講義」という新しいスタイルの授業に初めて挑戦しました。垂直講義というのは、ある病気についてまず「基礎」となる部分、つまりその病気がどうやって起こるのかを教え、その後に「臨床」となる部分、つまり実際の検査や治療について教えるという流れの講義です。これまでの医学科授業は、ユニットとして臓器別の講義をする場合にも、基礎をおさらいした後に臨床の内容を学ぶというスタイルが一般的でしたが、垂直講義では1つの疾患について基礎と臨床のスペシャリストがそれぞれを病態をつなげることができるため、パズルのピースがぴたりとはまるように、知識が頭の中でつながっていくように知識が得られるのではないかと思われます。
https://s-igaku.umin.jp/DATA/65_03/65_03_06.pdf
垂直講義の導入にあたっては、香大医・医学教育学の横平教授の強い後押しがありました。横平先生はこれまで香川大学ではこういった形式の授業が行われてこなかったことを指摘され、より効果的な学びのスタイルとしてこの垂直講義の実施を後押ししてくださいました。今回はその第一弾として、「泌尿器科」の分野で垂直講義を実施しました。今回の講義では、「薬で治す部分」と「薬では治せない部分」の両方を学ぶ構成としました。

写真:高知大学・斉藤教授の講義スタート、8:30からなのにすでに結構出席アリ!
基礎の薬理学講義を担当してくださったのは、高知大学からお越しいただいた斉藤教授です。斉藤先生は泌尿器科領域における薬理学の第一人者であり、今回は「排尿機能のしくみとそれに関わる薬」について、専門的でありながらわかりやすくお話くださいました。

写真:9:00にはだいぶ出席していましたが、斉藤先生の講義は本当にお上手で、私も勉強になりました。学生さんの評判も非常にいいです!
具体的には、膀胱の収縮や弛緩に関わる神経の仕組みと、それに対する薬の作用についての解説がありました。たとえば、抗コリン薬という薬は、膀胱の筋肉が勝手に縮んでしまうのを防ぐ働きがあり、「過活動膀胱」という、おしっこが近くなってしまう病気に使われます。同様に膀胱の筋肉をゆるめて、おしっこを我慢しやすくするβ3受容体作動薬や、前立腺が大きくなることで尿が出にくくなる「前立腺肥大症」に対して使われる薬、たとえばα1受容体遮断薬なども交感神経活動の生理学的な「しくみ」を図や具体例を交えて、とても丁寧に説明してくださったことで、学生たちの理解も深まったように思います。まさに生理学〜薬理学のリレーといった感じでした。


写真:田岡先生の熱血講義!泌尿器領域の先生方は本当に熱いです!!
後半の講義では、香川大学の泌尿器科の田岡先生が登壇し、薬だけでは治すことが難しい患者さんに対する外科的処置について学生に教えてくださいました。たとえば、前立腺肥大症などによる排尿障害などの症例を取り上げ、薬で効かない場合にどのような選択肢があるのか、現場のリアルな話を交えてお話しくださいました。さらに今回の講義では、国家試験にも出題された内容を盛り込んでいただきました。これは学生たちが「試験に出るから勉強しよう」という動機づけにもなり、実際の知識の定着にもつながったと思います。垂直講義は、ただ理解を深めるだけでなく、勉強に対する意欲を高める効果もあるんだなあと感じました。

写真:サンポート高松にある「陳健一の担々麺」、自分にご褒美に年に一回くらいいただきます(本文とは全く関係ありません)。
講義中の学生たちの様子を見ていても、いつもより真剣に、そして楽しそうに聞いている印象を受けました。出席率も非常に良く、学生からも「今までで一番わかりやすかった」「基礎と臨床がつながった感じがした」などの声が寄せられ、非常に好評でしたので、今後もこのような垂直講義のような「効率的」で「実践的」な教育スタイルを広げ、学生の学びと未来を第一に考えながら、教育の質の向上を目指していきたいと思いました。
これからの医師には、知識だけでなく、目の前の患者さんにどう向き合うかを考える力が求められます。そのために、私たちはこれからも柔軟な発想で、よりよい教育を追求し続けます。学生一人ひとりの可能性を広げる香川大学医学部であり続けるために、全力を尽くしてまいります。皆様方のサポートを今後とも何卒よろしくお願い申し上げます!!
P.S.
新しい「ふるさと納税」制度のお知らせ
令和7年3月より、香川大学医学部が位置する三木町へのふるさと納税制度を活用して、香川大学医学部・医学部附属病院をご支援いただくことができるようになりました。
未来の医療を担う香川大学医学部の学生や大学院学生、医学部附属病院の研修医及びその指導を行う関係者らのために、本制度によるご寄附にご賛同を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
香川大学医学部は、「地域に根ざし、世界に羽ばたく医療人を育てる」ことを大切にしています。そのためにも、皆さまの温かい応援がとても力になります。「未来の医療を支える学生や医療人のために、一緒に応援しよう!」そんな気持ちでご協力いただけると大変嬉しいです。
是非とも以下のリンクかQRコードをから、どうぞよろしくお願いいたします!https://www.med.kagawa-u.ac.jp/~redevelop/index.html

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