私の研究:①「Osmo-adaptation」JAXAとのコラボ紹介(その3)

昨日に続いて現在私が手掛けている3つの研究プロジェクトのうち、① JAXAとのコラボ「Osmo-adaptation」の話を続けます。

ニューオリンズの留学はなかなか厳しいものでしたが、幸いラボを任せてもらえるような成果に繋がり、香大医に戻ってからもTulane大学で私の研究室を維持しておりました。しかし、2005年のハリケーンカトリーナなどの影響もあり、香大医での研究に集中することとしました。その後、2007年に香大医・薬理学の教授を担当することとなり、宇宙研究の夢などはすっかり頭から離れてしまっておりました。

そんな中、北田先生(現・助教)が大学院生として私の教室に来てくれました(前述)。そして、彼も私と同じように米国に留学し、ロシア人の宇宙飛行士パイロットを解析し、人間も「夏眠」するというショッキングな発見をされました。

https://nishiyama-akira.hatenablog.jp/entry/2024/02/20/080102

私は「夏眠」という言葉さえ知らなかったのですが、生命の進化の過程で水の中から陸に上がる時に獲得した能力だそうです。水のない陸の上で脱水を起こさないために生体が生じる生体反応のことだそうで、目には見えないのですが、その能力の一部が人間にも残っていると言うのです。当然、世間からは「そんなアホな」という厳しい評価をいただきましたが、今は多くの研究者に認めてもらえることとなってきています。

写真:北田先生が報告した人間も「夏眠」するという記事(論文はJ Clin Investに掲載)

 

この「夏眠」という生体反応を示す生物としては肺魚という魚が一番有名ですが、雨季の間は水の中で泳いでいますが、乾季には土の中に潜り、何ヶ月も水を飲まなくても生きているような生体現象をそう呼ぶそうです。カタツムリが全然動かないけど、雨が降ると動き出すのは子供の頃によく見ましたよね。あの動かないカタツムリは「夏眠」をしていて、雨を待っている状態だそうです。詳細には、「夏眠」している時には全身の代謝をコントロールしてさまざまな浸透圧物質を大量に作り、体液の調節を行うというものです。私たちは、この「夏眠」できる能力が実は人間にも保存されていて、潜んでいるこのパワーをうまくコントロールできれば、究極の健康を手に入れることができるのではないかと考えています。現在、北田先生は留学を終えて香大医に戻り、様々な検討を進めているところです。

「夏眠」の話はまた後日ゆっくりとしますが、そんなある日、ネットでJAXAがマウスの宇宙研究を募集しているという記事を目にし、忘れていた宇宙に対する憧れが沸々と再び湧き上がってくる感覚を覚えました。そして、「夏眠」による体液調節と結びつけることができるカモと妙な気をおこし始めたのです(かなり無理がありますが、、、)。

今日も長くなりましたので、続きは明日に。