私の研究:①「Osmo-adaptation」JAXAとのコラボ紹介(その4)

一昨日、昨日に続いて現在私が手掛けている3つの研究プロジェクトのうち、① JAXAとのコラボ「Osmo-adaptation」の話を続けます。

北田先生(現・助教)が人間も「夏眠」に似た体液調節しているというショッキングな発見をした2017年、たまたまJAXAがマウスの宇宙研究を公募しているのを目にしました。その時私は、留学時代に挫折した悔しい気持ちと宇宙への憧れの気持ちが、湧き上がってくるように感じました。そして、当時私たちが研究していた体液分布を宇宙で飼育したマウスで観察するという研究案を申請し、2018年と2020年に採択を受けることができました。そして、JAXAを通じて宇宙で飼育したマウスのサンプルを手に入れ、無重力状態では劇的に体内で体液移動が生じていることを証明しました。

写真は、マウスサンプルシェアに採択された時に出したプレスリリースの画像など(データはKidney Int誌2022年に掲載)

 

重力のある地上から無重力の宇宙に行くと体液移動が生じることを定量的に実証した研究は初めてでしたが、実はそのようなことは以前から想定されていました。そのため、私の宇宙研究はここで終わるはずでした。しかし、宇宙飛行士の方と話をする機会があり、「宇宙に行くとアンパンマンのように顔が浮腫むんだけど、しばらくすると元に戻るんですよ」と教えていただきました。そこで私はピンときました、何故、ずっと無重力にいるのに顔の浮腫が元に戻るのか、それは体内にある目に見えない体液制御システム「夏眠」が作動するからではないのかという無茶苦茶な仮説です。

私は早速その仮説をまとめ、北田先生とJAXAの宇宙飛行士での検証のためのフィージビリティー研究に応募しました。ハッタリのような仮説でしたが、初年度は不採択で、2年目に無事採択されました。しかし、このフィージビリティー研究は大変で、実行できるかどうかの判断を2021・2022年の2年間かけてJAXAが行うというプロジェクトでした。私は宇宙の夢をかけて全力を尽くして課題をクリアして行きましたが、どうしても一つの基準をクリアできずにおりました。その基準とは、「2年以内に科研費以外の大型の国の競争資金を立案する宇宙研究に関連づけて獲得すること」というものでした。私はAMED予算の採択を持っているのですが、これは後日紹介する治療ワクチンの開発なので、宇宙研究と関連づけることはできません。どうしても「夏眠」研究では科研費以外に政府の大型競争資金を獲得することができず、もう断念するしかないのかと諦めかけていたその時、目の前に救世主が現れました。今日も長くなりましたので、続きは明日に。